特許翻訳の勉強に使える本・ウェブサイトまとめ(日英編)

フリーランス特許翻訳者のアツトです。

私は数年前、新卒で入社したIT企業の退職を決意し、特許翻訳業界への転職活動を始めました。

そして幸いなことに、複数の特許翻訳会社や特許事務所から内定を頂きました。

その転職活動中、そして入社までの期間中、「入社までに自分でどんどん日英特許翻訳を独学しておきたい!」と意気込んでいたのですが、「さて、では何の勉強をしておけば、入社後スムーズに日英特許翻訳者として活躍できるだろう?」と疑問に思っていました。

その当時は、自分で闇雲に色々な書籍を読んだり、ウェブサイトを閲覧していたのですが、無駄なこともしていたと思います。

そこで本記事では、特に日英特許翻訳の未経験者の方に向けて、独学に役立つような書籍やウェブサイトをご紹介したいと思います。

以下に紹介するのは、日英翻訳者として仕事をしている現在から振り返って、未経験者時代に独学しておいて有用だったと思う書籍やウェブサイトです。

なお、本記事は「これを読めば独学でフリーランス日英特許翻訳者になれる!」という趣旨ではございません。やはり、実際に日英特許翻訳者として活躍するためには、たとえ一時的(1~2年)にでも特許翻訳講座を受けて勉強するなり、特許翻訳会社(特許事務所)に転職して、OJTを受ける必要があると思います。

あくまでも補助的なものとして考えていただければ幸いです。

以下、日英翻訳のベースとなる英語力を鍛える技術英語編、実際の翻訳である日英翻訳編、そして翻訳支援ツールに関する翻訳支援ツール編とに分けてご説明します。



1. 技術英語編

1.1 書籍

この書籍は転職前に読みましたが、英文ライティングの基本の基本を学べるという意味で良書だと思います。

特に、第2章、第3章の「ライティングのための英文法」は、日英特許翻訳者として間違えると恥ずかしいというレベルなので、日英特許翻訳者志望の方は念のため確認されることをお薦めします。(なんか、偉そうですみません。。でも、本当にそう思うのです。)

以前、特許翻訳会社に勤務していた頃、トライアルのチェックを何度かしたことがあるのですが、この本に記載されているレベルの英文法の誤りを犯している方がいました(経験年数は10年以上の方だったと思います)。

その方がトライアルに合格されたかどうか・・・ほぼ答えは出ていますが、社内機密ですので秘匿しておきます\(^o^)/

この書籍は隠れた良書です!

ケンブリッジ大学出版から出ているProfessional Englishシリーズの一冊なのですが、Engineeringとあるように、電気、機械の幅広いトピックについて英語での解説がされています。

技術英語を学ぶというよりは、基礎的な技術を英語で学ぶ本と言った方が正確かもしれません。

しかも、問題と解答つきなので、学んだ知識をきちんと定着させることができます。

この本に記載されている技術英語の表現は、日英翻訳の実務でもバンバン使っています!

また、同シリーズでICT編(コンピュータテクノロジー)もありますので、ITの基礎を英語で学ばれたい方にはお勧めです(アツト的にはengineering編の方が好きですが・・・)。

1.2 ウェブサイト

参照:the Physics Classroom

the Physics Classroomは、中学高校レベルの物理を英語で1から丁寧に解説したサイトです。サイトにアクセス後、Physics Tutorialの項目をクリックすると閲覧することができます。

高校時代に物理を履修された方なら技術的に既知の内容ばかりですが、「へ~、高校物理の○○って英語ではこう表現するんだ~」といった楽しさがあります(一部、colorに関する内容は日本の物理の教科書にはないものです)。

とても平易な英語で書かれているので、下手な日本語の物理の教科書よりも内容が分かりやすいかもしません(笑)。

もし、文系出身の方の場合、中学高校レベルの物理・化学は身に着けておいて損はないと思います。

例えば、高校レベルの物理を学習されていない翻訳者の方が、明細書の文脈上、「速度」が明らかにベクトルとして扱われているのに、「divided by the velocity」のように翻訳されているケースをそこそこ見かけますが、これは少し恥ずかしい誤訳だと思います(ベクトルでは割り算ができないので、speedとしなければいけません)。

以下の記事では、中学・高校レベルの物理・化学を学ぶ上でのおすすめ書籍やサービスについて書いているので、興味がある方は合わせてお読みくださると幸いです。

特許翻訳者の適性とは?文系でもなれるの?

2017.07.18

参照:howstuffworks.com

howstuffworksは、身の回りの物や現象の仕組み(how stuff works)を平易な英語で解説したサイトです。

高校や大学の教科書のように1から理論を説明したものではなく、1話読み切り型で気軽に技術に関するテーマを英語で読めるので、電車の中の5分~10分や細切れ時間の活用に最適なサイトです。

このサイトの最大の特徴はPodcastでの音声配信があること(無料)で、僕はよく通勤中に聞いていました。歩きスマホはNGですが、歩きPodcastはOKです!(笑)

Podcastで配信されているテーマのごく一部を下に挙げます。どれも身近で興味深い内容ですね!

・Do Supplemental Vitamins Actually Work?(ビタミンサプリは実際に有効か?)

・How X-Ray Machines Work(X線装置の仕組み)

・How Inkjet Printers Work(インクジェットプリンターの仕組み)

・How do polymer crystals work, and why do they absorb so much water?(高分子結晶の仕組みと、多量の水分を吸収する理由)

・Why doesn’t the vacuum of space suck away Earth’s atmosphere?(なぜ、宇宙の真空は地球の空気を吸い取らないのか?)

・How does a traffic light detect cars?(信号機はどのようにして車を検知するのか?)

・Should you turn your computer off when it’s not in use?(未使用時にはコンピュータの電源を切るべきか?)

・How are movies stored on DVD discs?(DVDはどのように映画を保存しているのか?)

・How do self-driving cars work?(自動運転車の仕組み)

・How many balloons would it take to life someone off the ground?(人間を宙に浮かせるには風船が幾つ必要?)

全体でおそらく1000本以上のテーマが配信されているので、全て聞くというよりは、興味のあるものを優先的に聞く方が長続きするでしょう。

このような様々なテーマの英語に日常的に触れることが、日英翻訳者としての基礎的なスキルアップにつながるのだと思います。

2. 日英翻訳編

2.1 書籍

この書籍は、転職前に購入して目を通しました。

この書籍の最大の長所は詳しすぎないことで、特許翻訳の入門の入門書としてお薦めです。

特許翻訳の右も左も分からない状態で本格的な特許実務の本を読んでしまうと、手続き的な話が延々と続いて楽しくないという事態に陥ってしまうと思います。

また、いきなり明細書の翻訳を解説するのではなく、特許翻訳の頻出表現をフレーズごとに説明しているのも、初心者への配慮に溢れています。

私が特許翻訳会社での社内翻訳者時代に購入したものなのですが、faber(米国特許出願に関する最も権威のある書籍)やMPEP(米国特許商標庁が定める審査基準)に基づく、実践的で翻訳の実務に直結する内容です

一例を挙げると、本書のp163、164に、「本発明」を「the present invention」と訳すことの是非に関する説明がありますが、実務上も、顧客の特許事務所に応じて、「the present invention」と訳すのか、または別の形で訳すのか(disclosureなど)は事前に確認すべきポイントです。

実践的で使える本であることは間違いないのですが、「明細書って何?クレームって何?」というレベルの内容は知っていることが前提とされています。

上に挙げた「弁理士が基礎から教える 特許翻訳のテクニック<第2版>」の内容は常識レベルとしておくべきでしょう。

<2017年12月3日追記>

2017年9月8日に出版された、米国特許弁護士であり、かつニューハンプシャー大学法科大学院准教授でもあるベンジャミン J.ハウプトマン先生による書籍。

ハウプトマン先生は、日本でハウプトマン・ハム国際特許商標事務所を運営されており、通常の知財業務と同時に、日本の弁理士、特許技術者、特許翻訳者向けにPADIASコースという、米国出願および中間処理の書類作成に関するセミナーを開かれています(実は、私は社内翻訳者時代、会社からPADIASを受けさせて頂きました。判例上、クレームで使ってはいけない表現を教わったり、米国特許のクレーム添削を受けたり、大変勉強になりました)

本書は、そのPADIASの講義に基づいた書籍です。

本書は、2つの目的を念頭に置いて書かれています。第1の目的は、PADIASコースを履修する生徒向けの教科書とすることです。第2の目的は、高品質な特許出願書類の作成を目指して学習している人にとって原点となる教材とすることです。これら両方の目的で、各章は、PADIASコースの実際の講義に基づいています。

~本書序文より引用~

米国特許弁護士による解説書としてはFaberが有名ですが、Faberは5万円近くかかりますし、一般の学習者が購入するにはややハードルが高いと思います。

その点、本書は価格的にもリーゾナブルですし、何より、ハウプトマン先生は、米国外で特許出願を担当する外国人向けに本書を書かれているという点で、Faberよりも、まずは本書に目を通されることをお薦めします。

本書は主に、米国外で生活し就労しつつ、米国に出願される予定の特許出願書類の作成および特許出願品質管理を担当する特許技術者および特許管理者のために書かれています。私は、ほとんどの読者にとって英語が外国語であることを想定して、文章をつづりました。

~本書序文より引用~

総額18万のPADIASで教わる知識が本書一冊で手に入ると思えば、非常に安いものです!(笑)

2.2 ウェブサイト

日英特許翻訳の勉強で最も実践的だと私が思うのは、Google Patentsなどで米国企業の明細書を実際に読むことです。

特に、普段から厳しい特許訴訟を戦っている企業(MicrosoftやAppleなど)の明細書は、それだけ力を入れて作成されていると思うので、大企業の明細書を読むと良いでしょう。

自分だったら、この英語を書くことができるか?」という視点で読むことで、より学習効果は高まると思います(私の場合、参考になる英語表現をマーキングして、後から見返していました)。

以下では、Google Patentsの使い方を知らない方のために、企業名を指定して米国特許を検索する方法について述べておきます。

(1)Google Patentsの詳細検索ページ(https://patents.google.com/advanced)にアクセスし、「+Assignee」の欄に企業名を入力(ここではMicrosoft)。

(2)検索結果に、指定企業が保有する米国特許の一覧が表示される。

3. 翻訳支援ツール編

翻訳支援ツールは、翻訳の精度を高め、かつ翻訳のスピードを上げる(=収入を上げる)上で必須と言えます。

しかし、まだ翻訳実務に携わっていない方は、

翻訳支援ツールって、具体的にどんなメリットがあるんだろう?

翻訳支援ツールにも複数あるけど、どんな違いがあるんだろう?

という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。

その場合、翻訳支援ツールの入門として、まずは以下の動画を視聴されることをお薦めします。

フリーランス翻訳者になろう!

オンライン学習プラットフォームのUdemy(*)で、フリーランス翻訳者のギネスいとうさんが無料公開されている、翻訳支援ツールの入門動画です(「翻訳支援ツールについて」と題する14分25秒の動画です。リンク先⇒「フリーランス翻訳者の必需品!」⇒「翻訳支援ツールについて」と進んで下さい)。

こちらは、動画で分かりやすく、翻訳支援ツールの基本について解説されているため、翻訳支援ツールに不慣れな方でも、翻訳支援ツールの基本事項や、代表的なツールであるTrados、memoQなどの違いを知ることができます。

(*)Udemyとは

Udemyとは、カリフォルニア発、世界で1500万人以上が利用する世界最大級のオンライン学習プラットフォームです。プログラミング、Webデザイン、マーケティング、データサイエンス、エクセルなど、様々なスキルを学ぶことができます。余談ですが、私も現在、スキルアップのためにWebデザインを学んでいます。


以上、日英特許翻訳に興味のある方や未経験者に向けて、スキルアップにつながる書籍やウェブサイトを紹介しました。

紹介したものは、どれも良いものだと思いますが、やはり実際に日英特許翻訳者として仕事をするためには、特許翻訳会社(特許事務所)での経験はほぼ必須だと思いますので、あくまでも補助的なものとして考えていただければ幸いです。

最後までお読み下さりありがとうございました!

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