ネイティブ翻訳者だって英語を間違える!5つの実例を紹介

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フリーランス特許翻訳者のアツトです。

日英翻訳に興味がある。でも、ノンネイティブの自分なんかに務まるのだろうか?」と心配されている方はいらっしゃいませんか?

私は特許翻訳業界に転職する前、めちゃくちゃ心配していました。

完璧な翻訳を仕上げるネイティブ翻訳者に対して、日本人翻訳者は中途半端な英語しか書けないのではと不安に思いますよね。

これは言わば、ノンネイティブコンプレックスと言うべきものかと思います。

私はフリーランスになる前、特許翻訳会社に勤めていて、複数のネイティブ翻訳者やチェッカーと交流する機会がありました。

そして、その経験から、今は「少なくとも特許翻訳という分野において、日本人翻訳者はネイティブ翻訳者と対等以上に戦える!」という自信を持ち、ノンネイティブコンプレックスを完全に克服することができました。

ただ、そうは言っても、ネイティブ翻訳者と交流する機会がない、特に翻訳未経験者の方は、「本当にそうなのか?」とイマイチ納得できないと思います。

そこで、本記事では、私が実際に職場で見聞した中で、「ネイティブ翻訳者だって完璧ではない。日本人翻訳者と同じように様々なミスをする」ことの具体例について述べたいと思います。

ちょっと意地悪い趣旨の記事ですが(笑)、ネイティブ信仰によって日英翻訳に踏み出せない方の参考になれば幸い、ということでご容赦ください。

題材は特許翻訳ですが、実務翻訳分野であれば同様に通用する話だと思います。

以下では、「修飾の誤り」、「文法の誤り」、「専門用語の誤り」、「和製英語の誤り」、「訳し分けの誤り」の5つについて触れます。

1. 修飾の誤りの実例

原文:センサーは、車体の加速度を検出し、検出した車体の加速度を制御部に送信する。

ネイティブによる誤訳:The sensor detects the acceleration of the vehicle body, and transmits the acceleration of the detected vehicle body to the control unit.

修正後:The sensor detects the acceleration of the vehicle body, and transmits the detected acceleration of the vehicle body to the control unit.

上の原文において、検出したのは「加速度」であって、「車体」ではありません。

しかし、元の訳文だと、「detected vehicle body」、つまり「検出された車体」となってしまっていて誤訳です。

ですから、これは「detected acceleration」と修正しなければいけません。

これだけ見ると、「そんなアホなミスするのか?」と思われるかもしれませんが、こういうケアレスな修飾関係の誤訳というのは、経験年数が長い特許翻訳者であれば、誰でも一度や二度の経験はあると思います。

ただ、一般的にネイティブ翻訳者は日本人翻訳者よりも、このような修飾関係のミスが多い傾向にあります

2. 文法の誤りの実例

原文:~に関して実行される。

ネイティブによる誤訳:executed relating to~

修正後:executed in relation to~(ネイティブチェッカーによる修正)

これは、ネイティブ翻訳者の翻訳をネイティブチェッカーが修正し、そして私に回されてきたものです。

英文法上、relating toは名詞修飾、in relation toは副詞修飾であるため、executedを修飾するのであれば、in relation toとしなれけばなりません。

基本的な英文法ですが、ネイティブでもそのような誤りを犯すことはあります。

余談ですが、私の好きな作家の一人である藤原正彦の「若き数学者のアメリカ」という本に、興味深い文がありますので、合わせてご紹介します。

藤原正彦さんは、1973年にコロラド大学に助教授として赴任され、学生の数学のレポートもチェックされていたそうですが、その文章が酷かったと書かれています。

文法上の誤りも多い。三人称単数の動詞にsを付け忘れたり、時には主語や動詞のない文章を平気で書いたりもする。また、I don’t have any moneyが正しいところを、I don’t have no moneyなどとするのがいくらもいるから、初めの頃は肯定なのか否定なのか分らず戸惑ったものだ。

~藤原正彦「若き数学者のアメリカ」より~

いくらなんでも、「I don’t have no money」は正気かと疑いたくもなりますが(笑)、ネイティブだからと言って文法が完璧ではないのは私の経験上からも正しいです。

また、「Everybody Writes」というアメリカで非常に有名なライティングの書籍も、「Usage Confusion」という章で文法上の誤りに言及しています。

Use less in relation to a single, noncountable item and fewer in relation to more than one countable item. So, a good shortcut: if you can count the thing you’re referring to, use fewer.

~Handley, Ann. Everybody Writes: Your Go-To Guide to Creating Ridiculously Good Content (pp.113-114). Wiley. Kindle 版.より~

単一の数えられない物にはlessを使って、1つ以上の数えられる物にはfewerを使いましょう

なんてことが、アメリカの成人向けのライティングの書籍には堂々と書いてあるくらいですので、やはりネイティブだからと言って、文法が完璧であるわけではないと思います。

3. 専門用語の誤りの実例

原文:大域制御

ネイティブによる誤訳:large area control

修正後:global control

「大域」と「局所」という概念は、理系出身の方であればお馴染みの概念で、それぞれglobal、localと訳すことはご存知かと思います。

このネイティブの方は、経済学部出身ということもあり、おそらくそのような知識が無かったのでしょう。large area と誤訳されていました。

「そもそも、もっとちゃんと調べろよ」と激しく突っ込みを入れたくなるところですが(笑)、ここで言いたいのは、ネイティブだって専門用語の翻訳は完璧じゃない、日本人と同じく、きちんと調べないと誤訳してしまう、ということです。

4. 和製英語の誤りの実例

これは、あくまでも聞いた話です。

ある顧客(A社)が、それまで付き合いのあった翻訳会社(B社)を切って、私が在籍していた翻訳会社に仕事を回すようになりました。

アツト「社長、なぜA社はB社との取り引きを切ったんですか?」

社長「B社のネイティブ翻訳者が、「テストモニター」を「test monitor」と誤訳したことが原因らしい。せっかくネイティブ翻訳者に頼んだのに、和製英語の間違いを犯してしまっては意味がないと。」

テストの被験者のことを「モニター」と言いますが、これは和製英語で、英語のmonitorに被験者の意味はありません。

ですから、「テストモニター」は、「test subject」などと訳さなければなりませんが、なんとB社のネイティブ翻訳者は、monitorと訳してしまったとのことです(おそらく、そのネイティブ翻訳者は原文の内容を理解することができず、字面だけで翻訳してしまったのかと思います。日本人でもあり得る話です)。

これは聞いた話なので、100%正確かは分かりませんが、ネイティブ翻訳者ですら和製英語の罠にはまることがあるのです。

5. 訳し分けの誤りの実例

原文:ブザー待機フラグ、ブザー待機領域

ネイティブによる誤訳:buzzer wait flag、buzzer wait region

修正後:buzzer wait flag、buzzer delay region

最後は、本来は訳し分ける必要がある「待機」という用語を訳し分けることをせずに、いずれも「wait」と訳してしまった例です(実際はブザーではないのですが、パテントの特定を避けるためにブザーとしておきます)。

この案件における「ブザー待機フラグ」は、「ブザーの発生が好ましく、ブザーを積極的に発生させるためのフラグ」でした。

一方、この案件における「ブザー待機領域」は、「ブザーの発生が好ましくないため、それを遅らせるための領域」でした。

waitの用例を考えて頂ければ分かると思いますが、waitというのは、一般的に好ましいもの、発生してほしいことを待つというニュアンスがあります。

・a queue of people waiting for a bus (バスを待っている人の列→バスが来てほしい)

・I sat waiting patiently for the wedding to end(結婚式が終わるを辛抱強く待った→結婚式が終わってほしい)

~いずれもLongman Dictionaryより~

「buzzer wait region」と訳してしまうと、あたかもその領域が、ブザーの発生を好ましいものとして待っているように解釈できてしまいます。

したがって、この場合は「buzzer delay region」として、ブザーの発生を遅らせる、つまり、ブザーの発生が好ましくないというニュアンスを付加する方がより明確なのです。

(もちろん、この修正は翻訳を担当したネイティブと議論をし、納得してもらったものなので、独りよがりの考えで修正をしたわけではありません)

若干、複雑な(?)話になってしまいましたが、ネイティブ翻訳者とは言っても、言葉のニュアンスを常に適切にかぎ分けて、訳し分けができるわけではありません。


以上、私が実際に遭遇したネイティブ翻訳者の誤訳について述べました。

ネイティブ翻訳者と言っても完璧からはほど遠く、日本人翻訳者でも十分、彼らと競争することができます。

日英翻訳の仕事に興味を持っている方は、自信を持ってこの世界に飛び込んできてください!

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