特許翻訳の講座よりも翻訳会社への転職をおすすめする5つの理由

フリーランス特許翻訳者のアツトです。

私は数年前、新卒で入社したIT企業を退職し、特許翻訳会社にチェッカー兼翻訳者として転職しました。

現在はその会社も退職し、フリーランスとして活動しています。

ネット上の情報を見ていると、特許翻訳の仕事を新たに始めるに当たって、翻訳学校の講座を受講し、そのままフリーランスになることを目指されている方が多いように思えます。

なぜか、特許翻訳会社(特許事務所)に未経験者として転職することにはスポットライトがあまり当たっていないように感じるのです。

そこで本記事では、「翻訳講座を経て、そのままフリーランスを目指す」よりも、「特許翻訳会社(特許事務所)に一度転職し、その後フリーランスを目指す」ことのメリットについてお話ししたいと思います。

この記事の意図は、キャリア形成を考える上で別の視点を提供したいということであり、翻訳講座を否定するものではありません。

家庭の事情で通勤ができなかったり、田舎に住んでいて近隣に特許翻訳会社(特許事務所)がないということもあり得ます。

しかし、都市圏に住んでいて、通勤ができない事情が特段ないのであれば、講座ではなく、特許翻訳会社(特許事務所)への転職を考えた方が良いと私は思うのです。

では、本題に入ります。



1. 翻訳会社への転職をお薦めする5つの理由

1.1 顧客の特許事務所の声を直接聞くことができる

特許翻訳会社(特許事務所)の内部で仕事をしていると、日々、納品した翻訳文に対する評価(賞賛、苦情どちらも)を知ることができます。

私が以前、勤務していた特許翻訳会社では、自分の翻訳文だけではなく、他の翻訳者の翻訳文に対する特許事務所からの評価も全体に共有されていたため、「どのような翻訳が特許事務所から評価されるのか」、逆に、「どのような翻訳が特許事務所から評価されないのか」をリアルに知ることができました。

フリーランス翻訳者として仕事をしていると、基本的には淡々と翻訳文の納品をすることになり、自分の翻訳文、ましてや他人の翻訳文に対する評価を知る機会はほとんどありません(ゼロだとは言いません)。

顧客である特許事務所から好かれる(嫌われる)ポイントを知っているというのは、今後、営業力が重要になる特許翻訳者の中でアドバンテージだと思います。

1.2 自分の実力を相対的に知ることができる

特許翻訳会社(特許事務所)には、社内翻訳者とフリーランスの外注翻訳者とを合わせて数十人~数百人規模の翻訳者がいます。

そして、その中では翻訳者間の序列が必ず存在します

顧客から重要案件が来た際には真っ先に仕事を回されるエース翻訳者から、良い翻訳者の追加登録が発生したらいつでも切られる崖っぷち翻訳者まで、暗黙の順位が存在するのです。

自分が特許翻訳会社に勤務していた約3年間、そうして切られていく翻訳者を数多く見てきました

社内翻訳者として勤務していると、このような序列の中での自分の立ち位置を知ることができるため、「どのような水準の翻訳文を納品すれば、仕事を切られずに継続的に案件を受注できるか」を実感を持って知ることができるのです。

講座を受けてそのままフリーランスになってしまうと、良くも悪くも、他の翻訳者との比較という観点からの自分の実力が把握しづらいと思います。

1.3 ネイティブチェックを受けることができる

これは日英翻訳者に限った話ですが、特許翻訳会社(特許事務所)には通常ネイティブがいるため、ネイティブに自分の英文をチェックしてもらい、そのチェックの是非について面と向かって議論をすることができます

用語の微妙なニュアンスの違いなど、ネイティブの方と議論して得た知識は、フリーランスになった今でも、もちろん大いに役立っています。

また、私が翻訳会社で日英翻訳を担当し始めた初期の頃、言わば、ノンネイティブコンプレックスというものを抱えていました。

所詮、ノンネイティブの俺が書いた英文なんて不完全な物なんだろうか?俺は、完璧な英文を書くネイティブ翻訳者の劣化版に過ぎないなのだろうか?」というコンプレックスです。

しかし、いざネイティブチェッカーに自分の英文をチェックしてもらうと、意外とチェックが入らない。

むしろ、他のネイティブ翻訳者の方が、ネイティブチェッカーに多く修正されているような場面に頻繁に遭遇しました。

このようにして私は、少なくとも特許翻訳に関してノンネイティブコンプレックスを完全に克服することができ、英語力よりも技術知識よりも大切な「日英翻訳者としての自信」を手にすることができたのです。

フリーランス翻訳者になると、取引先の翻訳会社(特許事務所)のネイティブとじっくり議論をすることなど到底できないため、これは社内翻訳者を経験すること特有のメリットだと思います。

以下の記事は、私が社内翻訳者・チェッカー時代に実際に遭遇したネイティブの誤訳に関する記事です。

転職前の私と同じようにノンネイティブコンプレックスを持っている方には、是非読んで頂きたいです。

ネイティブ翻訳者だって英語を間違える!5つの実例を紹介

2017.09.26

1.4 リスク管理ができる

私の元同僚の話ですが、彼は翻訳会社に勤務して、チェッカー兼翻訳者としての経験を積みつつ、他の翻訳会社のトライアルを受けていました(もちろん、これは社内規定に抵触しています笑)。

そして、トライアルに3件合格した時点で、退職し、現在はフリーランス翻訳者としてバリバリ仕事をしています。

特許翻訳の講座に高額の料金を支払って、トライアルに中々合格できない、合格できても単価が低いという事態は悲惨なものですが、社内翻訳者であれば、トライアルに合格できなかったとしても普段の業務を継続するだけで、翻訳の実力が上がり、次のトライアルに備えることができます

同時に、トライアルに落ちても翻訳の経験年数は加算されていくため、トライアルの経験年数制限(5年など)を満たしていなかった翻訳会社のトライアルを受験することもできるようになります。

1.5 経験者としてトライアルに応募できる

特許翻訳の講座を受けて、そのままフリーランスになることの最大のデメリットは、未経験者としてトライアルに応募することになることです。

どれだけ素晴らしい講座を受けたとしても、未経験者は未経験者。

月給換算すれば大学新卒かそれ以下程度の単価(4~6円)しかオファーされないことが多いと思います。

1年間、社内翻訳者としての経験を積み、2年目からトライアルを受け始めれば、講座の費用負担もなく、かつ経験者として高単価(10円以上)の契約が狙えるため、二重の意味でメリットがあると言えるでしょう。

2. 特許翻訳の求人はどうやって見つける?

王道ですが、やはり特許翻訳の求人と言えば、パテントサロンの求人スクエアですね!

ただ、翻訳会社の中には、ホームページのみで求人情報やトライアル情報を公開しているケースも少なくないため、どうしても求人スクエアだけでは漏れが出てしまいます。

じゃあ、どうやって漏れなく求人情報を探すことができるの?

そんな疑問を持つ方には、以下の書籍に掲載されている翻訳会社リストがとても参考になると思います。

求人スクエアや転職サイトに求人・トライアル情報が載っていなくても、ホームページで募集しているケースは多々あるので、漏れなくダブりなくいきましょう(笑)

また、転職活動中、私は翻訳会社や特許事務所の口コミ情報をキャリコネを使って見ていたのですが、入社してみると、収入のことであったり、職場環境のことであったり、実際口コミの内容はかなり当たっていました(翻訳会社は、翻訳者に正当な報酬を支払う会社と搾取することしか考えない会社との二極化が激しいため、ブラック翻訳会社は初めから除外しておきましょう)。

ですから、キャリコネに限らず、企業の口コミサイトは馬鹿にできないなぁと思います。キャリコネは、DODAを含めて、大手求人サイトを一括検索できる仕組みも提供しているので、意外と使えるサイト(しかも完全無料!)です。

3. それでも特許翻訳の講座を選ぶなら

特許翻訳の講座には、スクール型と通信型とがあると思いますが、自分はスクール型をお薦めします。

と言うのも、スクール型であれば、特許翻訳を志す人同士のリアルな関係ができて、モチベーションの維持にとても役立つと思うからです。

通信型を全否定するわけではありませんが、どうしても1人でゴリゴリと勉強していると視野が狭くなってしまいますし、よほどの強い意思がない限りは挫折してしまうことの方が多いと思います。

自分も、翻訳会社時代に得た人脈は大きな財産となっていますし、同僚と熱い議論を戦わせることによって翻訳者として成長できた部分はとても大きいです。


以上、特許翻訳会社(特許事務所)への転職をお薦めする5つの理由について述べてきました。

以前、勤務していた特許翻訳会社では、一度フリーランスの募集をかけると、必要量を大きく超える特許翻訳経験者の応募が殺到していました。

ある弁理士の方のブログでも、「翻訳者は簡単に集まる」という趣旨の記載があり、翻訳未経験者が講座だけを受けてフリーランスに参入するというのは、大きなリスクを伴うものだと思います。

居住地域や家庭事情等の制限がないのであれば、特許翻訳会社(特許事務所)への転職を是非、選択肢の一つとして考えて頂きたいです。

スポンサーリンク