フリーランス特許翻訳者のアツトです。
昨今の副業ブームから、「未経験でも、自分の英語力を活かして在宅で翻訳の副業をしたい!」という需要の高まりを感じています。
翻訳は、仕事の時間と場所を選ばず、かつ翻訳の過程を通じて語学力のスキルアップにもつながるため、副業としては申し分ないと言えるでしょう。
私の会社員の友人からも、「在宅で翻訳の副業をするためにはどうすれば良いか?」と聞かれることもあり、このテーマについてまとめようと思いました。
まず、そもそも「翻訳」と言っても分野が複数あり、大まかには「実務翻訳」、「出版翻訳」、「映像翻訳」に分かれます。
実務翻訳とは
実務翻訳とは、別名「産業翻訳」とも言われ、企業活動に関わる文書全般、ニュース、マニュアル、ウェブサイト、特許、医薬関連の文書の翻訳などを意味します。
出版翻訳とは
出版翻訳とは、海外で出版された書籍や雑誌の翻訳をおこなうものです。
映像翻訳とは
映像翻訳とは、映像と外国語音声を元にして、日本の視聴者向けに吹き替えのセリフや字幕を作成するものです。
このように、翻訳にも分野が複数ありますが、私が従事しているのは実務翻訳の一種である特許翻訳であるため、以下では、実務翻訳を副業にするための方法について述べます。
また、翻訳という仕事に関して様々な疑問(「翻訳をする上でTOEICや英検の資格は必要?」、「翻訳って、どのくらい稼げるの?」、「和訳と英訳どちらがおすすめ?」など)があると思いますので、現役翻訳者の視点から、最後にその点についても触れておきたいと思います。
Contents
1. 翻訳の副業をする4つの手段
1. 1 求人サイトに応募する
仕事の獲得しやすさ:
報酬の高さ:
おそらく、翻訳の仕事を始めようと考える多くの方は、まず求人サイトを見るのではないでしょうか?
そして、実感するはずです。
「条件:翻訳経験〇〇年以上」の多さを。
そもそも、顔が見える正社員であれば社内教育ができますが、顔が見えない在宅の翻訳者に対しては時間をとって教育することもできないわけですから、依頼側が経験者を求めるのは当然です。
募集が完全にゼロというわけではないですが、正直な話、未経験者が求人サイトを通じて副業翻訳を始めるのは、そこそこ厳しいと思います。
ただ、私は翻訳の求人を探すに当たって、キャリコネを利用していたのですが、キャリコネは、翻訳の求人が豊富なDODAを含め、大手求人サイトを一括検索できる仕組みがあるので、複数の求人サイトに登録して検索する手間がかからずとても便利でした。また、翻訳の仕事は会社によって収入の差が激しいため、口コミ情報もチェックできて良かったです(そして、実際に後から考えると、結構口コミの内容は当たっていました笑)。
キャリコネは基本的に転職サイトの位置づけですが、求人の一括検索も、企業の口コミチェックも全て無料であり、副業目的の情報収集サイトとしても優秀だと思います。
1. 2 クラウド翻訳サービスに登録する
仕事の獲得しやすさ:
報酬の高さ:
クラウド翻訳サービスとは、オンライン上で翻訳の仕事の受注から納品までを完結させるものです。
代表的なサービスとしては、Conyac、gengo、YAQSがあります。
通常、クラウド翻訳サービスに登録して仕事をするためには、試験を受けなければならないのですが、Conyacに関してはなんと無試験でいきなり仕事をすることができます。
しかし、その場合は収入が低く、以下の方は30分で70円の収入を得たとのこと。
原文1本が短い(長い記事は分割されていて、一部だけでもよい)ので、30分程度で一つの翻訳ができた。とはいえその1本で報酬は70円程度だが。
また、登録時には必ず試験を課しているgengoですが、CEOのロメイン氏はインタビューで、2万人の登録翻訳者の中で一番稼いでいる方で年収450万と語っています(出典:「言語の壁」をクラウド型人力翻訳でなくす)。
このようにクラウド翻訳サービスは、報酬額の低さが難点ですが、「とにかく、まずは収入を気にせず、翻訳の仕事をしてみたい!」という方にはお薦めです。
また、他の3つの方法の場合、数時間~数日もの時間がかかる翻訳の案件がほとんどですが、クラウド翻訳サービスの場合は、1文のみ翻訳という仕事があるのも、気軽に翻訳の仕事をしたい方にはメリットと言えるでしょう。
1. 3 クラウドソーシングサービスに登録する
仕事の獲得しやすさ:
報酬の高さ:
クラウドソーシングサービスも、クラウド翻訳サービスと同様に、オンライン上で翻訳の仕事の受注から納品までを完結させます。
代表的なサービスには、ランサーズ、クラウドワークス、ココナラがあります。
クラウド翻訳サービスと異なるのは、クラウドソーシングサービスでは翻訳以外にも様々なサービス(ライティング、ウェブデザイン、システム開発、イラストなど)が取引されている点です。
クラウドソーシングサービスは、依頼者と翻訳者との直接取引が原則となるので、翻訳料金は自分で設定できますし、また仲介会社のマージン(=システム利用手数料)も、クラウド翻訳サービスに比べれば低めです。
要するに、クラウド翻訳サービスよりも稼げる可能性が高いわけですが、その分、現役翻訳者も多く登録しており、仕事の獲得競争率は高いです。
翻訳未経験者であれば、まずは現役翻訳者の7~8割程度の金額で仕事を請け負って実績を積み、高評価を得るという過程を経る必要があります。
1. 4 アメリアネットワークに入会する
仕事の獲得しやすさ:評価なし
報酬の高さ:評価なし
翻訳者ネットワーク「アメリア」は、株式会社アメリア・ネットワークが提供する、翻訳の仕事獲得とスキルアップを支援する有料の会員制サービスです(入会金5400円、年会費16200円)。
有料のサービスであるため、星による評価は控えておきます。
翻訳スキルの教育と、仕事の紹介という二つの機能を備えている珍しいサービスで、通常の求人サイトには登録されていない未経験者可の案件も豊富に揃えているのが特徴です。
しかも、このサービスが凄いのは、クラウン会員制度というもので、以下の画像のように、未経験者でもアメリアが毎月実施する定例トライアル(=翻訳の模擬試験)で好成績を取れば、経験者向けの求人に応募できるという点です。
アメリアの会員になれば、特許、医薬、金融、IT、フィクション、字幕、吹き替えなど、あらゆる翻訳の分野に関して、2001年からの定例トライアルの過去問とプロによる詳細解説が全て閲覧可能になるため、良質な翻訳の学習教材を膨大に入手することができます。
翻訳の仕事に興味はあるけれども、どの分野が自分に向いているのか分からない方は、様々な分野の定例トライアルの過去問を閲覧することで、自分に向いている翻訳の分野を見つけると良いでしょう。
「自分に合った翻訳の専門分野を見つけて、スキルを磨きたい」
「せっかく翻訳の仕事をするなら、お小遣い程度ではなく、高収入を得たい」
「最初は副業から始めたいけど、場合によってはプロの翻訳者になるのもありかも?」
アメリアは、このように気合が入った方におすすめです(笑)
以下の記事は、高校教師として仕事をしつつ、アメリアで翻訳を学び、現在はフリーランス翻訳者として仕事をされている高木さんの体験談です(最初は副業から翻訳を始められたそうです)。
高木さんも、アメリアの定例トライアルを活かして、自分の専門分野を見つけることができ、翻訳者として初仕事を頂けたそうですので、とても参考になります(^○^)
2. 翻訳のお仕事Q&A
以下では、翻訳の仕事の初心者が気になりそうなテーマについて、また実際にお問い合わせフォームから頂いた質問を元にして、Q&A形式で回答を記載しました。是非、参考にして頂けると幸いです。
2.1 翻訳の仕事を得る上で、TOEICや英検の資格は必要?
翻訳経験者であれば、資格は不要ですが、未経験者の場合、資格を持っていた方が間違いなく仕事を得る上で有利に働きます。
翻訳の求人を検索してみれば一目瞭然ですが、かなり多くの求人情報に「TOEIC××点以上」という指定がありますし、ランサーズなどのクラウドソーシングサービスなどでも、多くの翻訳者がTOEICの点数や英検の資格をアピールしています。
私が転職活動をしていた時にも、TOEIC985というスコアは、どこの翻訳会社に行っても褒めて頂きました。
そもそも、翻訳の未経験者は実績が全くないのですから、翻訳の仕事を依頼する側は不安に思って当然であり、TOEICや英検などの客観性のある指標に安心を求めるのも、また当然と言えるでしょう。
具体的には、TOEIC800点以上は最低でも取得しておくと高評価につながります(逆に、TOEIC800点未満の方の場合、翻訳をする上での基礎的な英語力に欠けるのでは?と私も思います)。
TOEICの勉強をする上では、本を使って勉強するのも良いですが、最近では以下のようなオンライン学習サービスもあるため、利用を検討するのもありでしょう。
2.2 翻訳の仕事って稼げるの?収入はどのくらい?
本当に身もふたもない言い方をすると、人によるとしか言いようがありません(笑)
翻訳の収入は処理量によって大きく影響を受けるため、「翻訳が早い人=たくさん稼げる人」というのは真実だからです。
しかし、確実に言えるのは、翻訳でしっかりと稼ぐためには分野選びが重要です。
具体的には、私の専門である特許翻訳や医薬翻訳という分野は専門性が高く、素人がいきなり手を出せるものではありませんが、その分、稼げます。時給換算すると、4000~5000円というのはざらですし、年収1000万円以上稼いでいる翻訳者もたくさんいます。
逆に、IT翻訳やマニュアル翻訳などは価格破壊が起きており、稼げない傾向があります。
翻訳の専門性を磨かず、語学力だけで勝負をする場合には、時給換算で2000円程度が一つの壁になるでしょう。
もちろん、副業としての翻訳にどの程度深く関わるかは個人の好みの問題ですので、専門性を磨くべきだと言うつもりはありません。
ご自身の持ち前の語学力だけを活かして、お金を期待しない代わりにマッタリ翻訳をするのか?
語学力に加えて翻訳の専門性を磨いて、お金をたくさん稼ぐのか?
全ては個人のスタンスの問題だと思います。
2.3 翻訳の仕事は和訳と英訳どちらがおすすめ?
単刀直入に言うと、英訳の翻訳者の方が稼いでいる方は多いので、「稼げるか?」という観点からは英訳がおすすめです(私も英訳をメインの仕事としています)。
もちろん、個人の向き不向きや好き嫌いも関わってくる話ですので、全ての人に当てはまる話ではありませんが、英訳の方が翻訳単価が高いため、全体的な傾向として、収入は和訳の翻訳者よりも高めになります。
2.4 純日本人でも、英訳の仕事はできるの?ネイティブには勝てないよね?
これは、私自身も転職前に気になっていたテーマです。
私も、今でこそ、英訳の仕事をしておりますが、日本生まれの日本育ち、英語の勉強も中学校から始めました。
ですから、「英訳をしても、ネイティブには勝てないのでは?」と心配していたのです。
しかし、実際に翻訳業界に入ってみて、ネイティブ翻訳者の翻訳を見てみると、ビックリするほど間違いが多くありました。
もちろん、英文自体は自然な表現なのですが、ネイティブの方は日本語の解釈に苦戦して、結果的に大誤訳をしてしまうケースが多いのです。
ネイティブ翻訳者・・・英語表現は自然だが、致命的な間違いが多い
お客さんの立場からすると、少しくらい英語表現が不自然でも、致命的な間違いが少ない方を選びたいものです。
ですから、日本人でも英訳に十分参入できるのです。
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